私は専業主婦です。財産分与はどのように決まるのでしょうか?

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06 私は専業主婦

財産分与とは、夫婦の協力で、それまでの生活において形成した財産を清算・分配する事です。
民法上、夫婦は、別々に財産を所有することになっている(夫婦別産制といいます)ので、夫の収入が多くて、妻の収入が少なかった場合は、夫名義の財産はたくさんあるのに、妻名義の財産がほとんどないということになります。そうすると、離婚後の元夫婦間の経済的格差が大きくなりすぎてしまいます。そこで、離婚後の元夫婦間の経済的格差を調整するため、元夫婦の一方から、他方に対し、財産の分与を求めることができます。これを財産分与と呼んでいます。
財産分与は、離婚の原因が相手にないと請求出来ない慰謝料と違って、相手に離婚の原因がない場合や、自分に離婚の原因があった場合にも請求することができます。ただし、財産分与を請求する側の当事者が、婚姻中の生活のなかで資産の形成に協力していた必要があります。したがって、別居後に形成された財産は財産分与の対象にはなりませんし、逆に、夫婦の協力によって得た財産であれば、名義が夫婦のどちらであるかに関係なく、寄与の程度(原則2分の1)で清算することになります。

家庭裁判所では、夫婦が協力して得た財産の額やその他一切の事情を考慮し、分与させるかどうかや分与の金額、分与の方法を決めていきます。昔は、「専業主婦の取り分は3割」という考え方をする裁判所もありましたが、現在、このような考え方はとられていません。夫婦の一方が特別の才能によって特に資産を増大させた場合のような特段の事情がない限り、夫婦で半分ずつとして考えます。
財産分与の対象になる財産は、不動産、株式、預貯金など、現存するものを分けるのが一般的ですが、近い将来確実に入ってくるもの、例えばあと5年ほどで退職金が入るなどといった場合はそれを含めることもあります。しかし、夫婦の一方が婚姻前から所有していた財産や、婚姻中に贈与されたり、親から相続した遺産は、特有財産といって、財産分与の対象から外されます(ただし、その特有財産の維持・増加に寄与があった場合には、財産分与の対象にされることも多いです。)。
財産分与には、婚姻中に形成した財産の清算(清算的財産分与)だけでなく、離婚後も一定の経済的援助が必要な者に対する扶養や、離婚に伴う慰謝料という要素も含まれます。しかし、扶養的要素や慰謝料的要素は補助的なもので、財産分与の主目的は、婚姻中に得た財産の清算です。

内縁関係の解消でも財産分与は認められますか

内縁関係とは、男女双方に婚姻の意思があり、夫婦共同生活を営みながら、婚姻届を欠くため、法律上の夫婦として認められない事実上の夫婦関係のことをいいます。そのため、婚姻関係に準じた法的保護を受けることができますので、内縁関係を解消した場合にも、法律上の離婚の場合と同様、財産分与や慰謝料を請求する事ができます。
ただ、相手方の死亡により内縁関係が終了した場合について、判例は、財産分与の規定は適用されないと述べています。この場合、内縁の配偶者には相続権も認められませんから、遺言も無かった場合には、結局、死亡した内縁の相手方から1円も財産を残してもらえないことになります。相続に関しては、内縁関係は、非常に立場が弱いですから、内縁の配偶者に遺産を残そうと思っている場合は、遺言をしておかなければいけません。

財産分与について別れた夫婦の間で話し合いましたが、折り合いがつきませんでした。どうすればいいのでしょうか。

家庭裁判所に財産分与の調停を申し立てましょう。調停では、家庭裁判所の調停委員が間に入って、財産の開示を求めたり、財産の評価(鑑定など)を行い、財産分与の金額や支払い方法を取り決めます。調停がまとまらなかった場合は、最終的に、裁判官による審判(判決のようなものです。)によって、財産分与の金額や支払方法が定められます。「調停」も「審判」も、それが成立すれば判決と同じような効果がありますから、これに従わない場合は、相手の預金や給料、不動産などを差し押さえて、強制的にお金を取り立てることができます。

夫には借金があって、それも半分に分けるべきだと主張していますが、どうなんでしょうか。

これは、借金の内容によります。日常の家事に関して生じた債務(婚姻生活のための衣食住の費用、医療費、子どもの教育費や養育費、交際費等で、夫婦の収入からみて、日常の生活費の範囲内といえるもの)は、夫婦が分担することになっていますから、これらの支払のために、カードキャッシングとかクレジットカードを利用したことにより生じた債務は、夫婦のどちらにも、その債務を返済する義務があります(連帯責任)。
しかし、住宅ローンは、夫婦が合意のうえした借金であって、その借金で夫婦の生活の本拠を購入したとはいっても、一戸建てやマンションの購入が日常家事だという夫婦はいないでしょうから、夫名義の住宅ローンについて、妻が返済義務を負うことはないのが原則です(ローンの保証人になっていれば、離婚しても保証人としての責任は残ります。)。
では、夫名義の住宅ローンを無視して財産分与を請求できるのかといえば、そんなことはありません。住宅ローンが夫婦共同生活のために必要だったのは事実なのですから、不動産の時価から住宅ローンの残債務額を差し引いた金額の2分の1を財産分与として支払うという計算になるでしょう。このとき、不動産の時価より住宅ローンの残債務額の方が上回っていたとき(オーバーローンといいます。)は、結局、不動産の価値は0ですから、不動産に関しては、財産分与を請求することができないことになります。

すぐにも離婚したくて、財産分与について話し合いをしないまま、離婚してしまいました。今からでも相手に財産分与を請求できますか。

離婚に伴う財産分与や慰謝料は、離婚と同時に行う事が一般的ですが、離婚が成立した後でも財産分与や慰謝料を請求する事が可能です。相手方が応じて来ない場合は、家庭裁判所に対して調停又は審判を申し立てることができます。しかし、いったん離婚してしまうと、元配偶者(=他人)の財産調査は極めて困難になりますし、離婚に応じてあげることの見返りとしてお金を払ってもらうという交渉もできないわけですから、請求する側にとって不利な状況に陥ります。後先考えずに離婚するのではなく、きちんと慰謝料や財産分与の事、未成年の子どもがいれば、養育費や面会交流の事も取り決めてから離婚しないと、絶対に後悔します。
また、財産分与は離婚時から2年、慰謝料請求は離婚時から3年で時効により消滅しますので、この点にも注意が必要です。

夫と調停で財産分与の分割払いを取りきめしましたが、最初の3ヶ月払ってきただけで、その後全く払ってきません。

家庭裁判所で決めた調停や審判などの取決めを守らない人に対して、それを守らせるための履行勧告という制度があります。まずは、この履行勧告の制度を利用してみてはいかがでしょうか。
家庭裁判所に対して履行勧告の申出をすると、家庭裁判所の方で、相手方に取決めを守るように説得したり、勧告したりします。履行勧告の手続に費用はかかりません。
しかし、義務者が勧告に応じない場合は支払を強制することはできませんので、相手がどうしても支払いに応じない場合は、その調書をもとに強制執行(例えば、夫の給与などを差し押さえして、回収を図ること)することになります。

夫は多額の借金があり、妻に財産分与をしてしまうと、債務超過になって、他の債権者への返済が不可能になってしまいます。夫婦合意の上での取り決めであれば、このような財産分与も可能ですか。

上記のような結果となる財産分与でも、原則は有効です。ただし、財産分与の額が、婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情に照らし合わせて、不相当に過大だといえる場合には、債権者から、財産分与を受けた元妻に対して、元夫からもらった財産を返せと請求されることがあります(このような請求権を、法律では、詐害行為取消権と呼んでいます。)。
また、上記のように、分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合には、贈与税がかかることもあります。(なお、財産分与が過大かどうかにかかわらず、不動産を財産分与した方には、譲渡所得税が課せられる場合があります。)

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