法律上の親子関係。DNA鑑定の結果次第でシロクロつくの?

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法律上の親子関係。DNA鑑定の結果次第でシロクロつくの?

裁判所で親子関係の有無が争われるケースがあります。しかし、「生物学上の親子関係がない」イコール「法律上の親子関係もなし」とか、「生物学上の親子関係がある」イコール「法律上の親子関係もあり」と、一律に決めている訳ではありません。裁判所は、生物学上の親子関係と、法律上の親子関係を、分けて考えているからです。
DNA鑑定はもちろん重要な証拠なのですが、法律上の親子関係は、DNAだけでは決められないのです。

生物学的に親子関係がないことがわかっても法律上の親子関係がある場合は?

養子縁組という制度があります。縁組届を役所に提出して受理されれば、それまで、赤の他人同士だったとしても、その日から、法律上の親子です。
養子縁組以外にも、生物学的に親子関係がないのに、法律上、親子関係を認めることになっている場合がいろいろあります。妻が出産した子どもについて、夫は、生まれた子どもが、本当は自分の子どもではないと訴えることができますが(法律では「嫡出否認の訴え」といいます。)、子どもが生まれたことを知って1年経ってしまうと、嫡出否認の訴えを起こすことができなくなると法律で決められています。このときは、DNA鑑定をして生物学的に親子関係がないことがわかっていても、法律上の父子関係が確定してしまいます。
性同一性障害のため、性別適合手術を受け、性別を女性から男性に変えた「男性」が、その後婚姻し、その「男性」の妻が、他人から精子提供を受けて人工授精によって妊娠して出産した場合、元女性である「男性」と、生まれた子どもとの間に生物学上の親子関係がないことは明らかですが、法律上の父子関係が認められます。
子宮摘出した妻が、自分の卵子と夫の精子を人工授精させ、その受精卵を別の女性の子宮に移植して子どもが生まれた場合には、生物学的な親子関係がないにもかかわらず、その子どもを出産した女性と生まれた子どもとの間に、法律上の母子関係が成立してしまいます。逆に言えば、自分の卵子と夫の精子を受精させて生まれた子どもでも、他人の子宮から生まれた場合は、生物学上の母子関係があっても、法律上の母子関係は成立しないことになります。
両親が、生まれてすぐの子どもをもらってきて、何十年にもわたって自分たちの実子として育て、一緒に生活してきたという場合に(本来は養子縁組をすべきですが、そうしないで、両親は実子として届け出ていました。)、本当の子どもが、よそからもらわれてきた子どもを訴えたという事件がありました。両親が亡くなった後の相続争いで、本当の子どもじゃないんだから、両親の遺産は相続させたくないということです。この裁判では、長年にわたって形成された親子関係及び社会生活上の関係を尊重すべきだし、いまさら、本当の子どもじゃないと訴えられる方の不利益も無視できない(かわいそうだ)ということで、本当の子どもからの訴えは権利濫用とされ、認められませんでした。結局、生物学上の親子関係はないけれども、裁判所は、亡くなった両親と、よそからもらわれてきた子どもとの間に法律上の親子関係を認めたということです。
上記のケースは、どれも、DNA鑑定をした場合には、親子関係がないという結果が出るはずですが、裁判所は、生物学上の親子関係がないことを承知のうえで、法律上の親子関係が存在することを認めています。

夫と妻との間に生まれた子どもでも、親子関係が争われることはあるの?

先ほど、嫡出否認の訴えは、夫が、子どもの生まれたことを知ってから1年以内にしなければいけないという話をしましたが、これは、婚姻届を出してから200日を経過した後に子どもが生まれた場合の話です。したがって、子どもが生まれたのが、婚姻届を出してからちょうど200日目のときは、200日経過していないので、1年以内というルールの適用はありません。
子どもが生まれたのが、婚姻してから200日経過しているか、していないかは、父子関係を争うときにとても重要です。婚姻から200日経過後に妻が生んだ子どもが、自分(夫)の子どもではないという訴え(嫡出否認の訴え)を起こせるのは、法律で、夫だけだと決められているからです。婚姻から200日経過後に子どもが生まれた場合には、妻や生まれた子ども自身であっても、嫡出否認の訴えを起こすことはできないのです(ただし、夫が合意していれば、家庭裁判所に妻から調停を申し立てることで、父子関係を否定する方法はあります。)。
一方、婚姻から200日経過する前に妻が生んだ子どもは、いつでも、誰からでも、親子関係不存在の確認を求める裁判を起こすことができます。また、子どもが生まれたのが婚姻から200日経過していたときでも、妻が妊娠した時期に、既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われていたとか、夫婦がそれぞれ遠隔地に居住していて、性的関係を持つ機会がなかったことが明らかなとき、たとえば、妻が妊娠した時期に、夫が刑務所に収容されていたような場合なども同じです。このようなケースでは、いつでも、誰からでも、親子関係不存在の確認を求める裁判を起こすことができます。別の言い方をすれば、婚姻届を出してから200日経過する前に子どもが生まれた場合(出来ちゃった結婚の場合など)は、いつ、誰から、訴えられて、親子関係が否定されるか分からないという状態が永遠に続くことになります。もちろん、訴えを起こすことができるというだけですから、訴えられたとしても、裁判に欠席しないできちんと対応すれば、親子関係の不存在の証拠(DNA鑑定など)がないのに親子関係が否定されることはありませんし、仮に親子関係の不存在を証明する証拠があったとしても、その訴えが権利の濫用に当たる場合には、親子関係が否定されることはありません。

嫡出推定とは?

妻が妊娠可能な時期に、夫婦間で性的関係を持つ機会がなかったことが明らかな場合を除き、婚姻から200日経過後に生まれた子どもの場合は、子どもが生まれたことを夫が知ってから1年以内に嫡出否認の訴えを起こさない限り、法律上の父子関係が確定します。これと同様に、離婚してから300日以内に生まれた子どもの場合も、子どもが生まれたことを元夫が知ってから1年以内に、元夫が嫡出否認の訴えを起こさない限り、元夫と子どもとの間に、法律上の父子関係が確定してしまいます。このような制度を、嫡出推定と呼んでいます。(なお、出生届に関しては、離婚してから300日以内に生まれた子どもであっても、医師が作成した証明書で、離婚後に妊娠したと推定される場合には、嫡出推定は及ばないものとして、元夫を父としない届出が可能です。)
嫡出推定が及ぶ子どもと父との父子関係を否定するには、嫡出否認の訴えをするしかありません。したがって、嫡出推定という制度は、法律上の父子関係の確定に当たって、大変重要な問題になっています。一方、法律上の母子関係は、婚姻中に妊娠したかどうか、誰の卵子から出来たかどうかは関係なく、その子どもを出産したかどうかで決めることになっていますから、嫡出推定という制度は関係ありません。

嫡出子とは?

嫡出推定と関係して、嫡出子という言葉があります。嫡出子とは、法律上の婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子どものことをいいます。紛らわしいですが、嫡出推定が及ぶかどうかで、嫡出子かどうかが決まる訳ではありません。嫡出子は、「推定される嫡出子」(嫡出推定が及ぶ場合)のほかに、「推定されない嫡出子」(出来ちゃった婚の場合など)や、「推定の及ばない嫡出子」(事実上の離婚をして夫婦の実態が失われていた場合など)、「準正嫡出子」(生まれちゃった婚の場合など)など、いくつかの種類に分けられます。これに対し、非嫡出子とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子どものことをいいます。以前は、非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の2分の1という規定がありましたが、今は、法律が改正されて嫡出子と非嫡出子の相続分は同じになりましたから、嫡出子か非嫡出子かどうかを区別することに、法律的な意味はあまりないといえます。

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