裁量労働制って何?

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先月、NHKが渋谷労働基準監督署から裁量労働制について、指導を受けたという報道がありました。報道によれば、勤務実態を踏まえ、適切な水準となるよう制度内容を見直すように指導を受けたようです。

労働時間は、法律で基準が定められており、使用者(会社)は、原則として、基準を超えて労働をさせてはならないとされています。具体的には、1週間について40時間、1日について8時間を超えた労働は禁止されています(法定労働時間)。

しかし、業務によっては、業務の遂行の仕方について労働者の裁量の幅が大きく、労働時間を厳格に制限することがかえって、業務遂行に支障をきたすことがあると言われるようになりました(ここではいわゆるホワイトカラーの業務が想定されています。)。そこで、一定の業務について、労働者側と使用者側の協定(労使協定)でみなし労働時間を定めた場合には、実際の労働時間に関係なく、協定で定めた時間数労働したものと「みなす」という制度が導入されました。これが裁量労働制です。

現在の裁量労働制には、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2種類があります。いずれの裁量労働制についても、仕事のやり方や時間配分を大幅に労働者の裁量に任せる制度であるため、業務の遂行について、会社から具体的な指示があり、労働者の裁量が認められないような業務については、裁量労働制は適用されないと考えられます。

いずれの裁量労働制の場合でも、休憩、休日、時間外・休日労働、深夜業の法規制は適用されますので、例えば、深夜や法定休日に勤務をした場合には、割増賃金の支払いが必要となります。

専門業務型裁量労働制って?

業務の性質上、業務の遂行について労働者に大幅な裁量を委ねる必要があり、その手段や時間配分について具体的な指示をすることが困難なことから、裁量労働制が認められるものです。ただし、そのような業務全てが対象となっているわけではなく、弁護士や税理士などの一定の士業や、システムエンジニアなど、法令で定める19の業務に限定されています。

また、制度を導入するためには、事業場において労使協定を締結する必要があります。さらに、みなし労働時間が法定労働時間を超える場合には、労使協定を労働基準監督署に届け出なければなりません。なお、労使協定では、次の事項を定めなければなりません。

①制度の対象となる業務
②業務遂行の手段や、時間配分に関し、労働者に具体的な指示をしないこと
③労働時間としてみなす時間
④労働者の健康・福祉を確保するための措置
⑤対象となる労働者からの苦情処理のために実施する措置
⑥協定の有効期間(労働協約による場合を除く)
⑦記録保存に関する事項(協定の有効期間中及び期間満了後3年間)

など。
労使協定は、労働者の過半数で組織する労働組合か、そういった労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者が使用者と締結するものですので、個々労働者全員の同意は、法令上必要とはされていません。

企画業務型裁量労働制って?

企画業務型裁量労働制が適用されるのは、「事業運営に関する企画、立案、調査、分析の業務であって、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務」(対象業務)を「適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者」に限られていますが、専門業務型のような具体的な業務の限定はありません。

例えば、経営企画を担当する部署において、経営に関する調査・分析を行ない、経営計画を策定する業務などが該当します。経営企画部で庶務等を担当するような場合には、企画業務型裁量労働制は適用されません。また、ここでいう労働者とは、少なくとも3年ないし5年程度の職務経験を持つ者が想定されています。

なお、制度導入には、専門業務型よりも高いハードルが設けられています。
具体的には、①労使委員会の5分の4以上の多数による決議(対象業務、対象となる労働者の範囲、みなし労働時間数、労働者の健康・福祉確保措置、苦情処理手続など)、②労働者本人の同意が要件となっています。また、労使委員会の決議後6か月以内に1回、その後は1年以内ごとに1回、労働基準監督署長への定期報告も必要です。
※労使委員会とは、使用者及び事業場の労働者を代表する者を構成員とする委員会で、委員の半数が労働者の過半数で組織する労働組合(労働組合がない場合は、過半数の労働者を代表する者)により指名されていなければならないなど、厳格な要件があります。

裁量労働制の場合、残業代が出ないのですか?

裁量労働制とは、実労働時間に関わらず、労使協定で定めた時間数労働したとみなす制度です。例えば、専門業務型裁量労働制で、労使協定で1日のみなし時間を8時間と定めた場合は、実際には5時間しか働いていなくても、10時間働いたとしても、8時間労働したとみなされます。そのため、みなし労働時間数が法定労働時間を超えない場合には、残業代(割増賃金)が発生しません。
とはいえ、どんなに働いても残業代が支給されないというわけではありませんし、深夜勤務手当や休日勤務手当など、一定の場合には、勤務手当が支給されることがあります。

たとえば、週の所定労働日が5日(週休2日)で、1日のみなし労働時間が8時間の場合、計算方法は、次のようになります。

①所定労働日(深夜残業除く)
1日の法定労働時間は8時間ですから、実労働時間に関わらず、みなし労働時間(8時間)勤務したことになるため、残業代は支払われません。

②所定労働日の深夜残業(22:00~5:00)
裁量労働制の適用はないため、みなし労働時間に関わらず、実労働時間に応じた深夜勤務手当(25%増)を支払う必要があります。

③法定休日以外の所定休日
例えば、土日休みの会社で、土曜日に働いた場合は、休日労働とはならず、時間外労働の扱いになります。週の法定労働時間(40時間)を超える場合は、実労働時間に応じて残業代(25%増、深夜に及ぶ場合は50%増)を支払う必要があります。

④法定休日
土日休みの会社で日曜日に働いた場合は、裁量労働制の対象となりませんので、実労働時間に応じて休日労働として残業代(35%増、深夜に及ぶ場合は60%増)を支払う必要があります。

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