親の金は盗んでも罪にならない?~親族相盗例のお話~

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る
INA99_saifuaketara1en_TP_V

人様の物に手をつけてはいけない。道徳的・常識的には、至極当たり前のことです。そして、人様の物の手をつければ、刑法上も窃盗罪や横領罪が成立します。ですが、刑法は、人様の物に手をつけたとしても、それが親族間で行われた場合には、窃盗罪や横領罪などで処罰されないことを規定しています。この規定を、親族相盗例(しんぞくそうとうれい)といいます。その理由については、「法は家庭に入らず」という思想の下に国家が刑罰権の介入を差し控えたものと解されています。要するに、「家族間の問題なんだから、家族同士で話し合って上手く解決してよ」ということです。

親族相盗例が適用される範囲は?

親族相盗例が適用される「親族」とは、民法が定める「親族」であるとされています。具体的には、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族です。このうち、配偶者、直系血族(祖父母や父母、子、孫など)又は同居の親族との間で行われた場合には刑が免除され、それ以外の親族との間で行われた場合には親告罪(犯人の処罰を求める被害者の意思表示である告訴がなければ、裁判をすることができない犯罪)とされています。

また、親族相当例が適用される犯罪は、窃盗罪、不動産侵奪罪、詐欺罪、背任罪、恐喝罪及び横領罪です。強盗罪は含まれません。加えて、盗品等関与罪については、別途、親族間の犯罪に関する特例が定められています。

内縁関係の場合でも親族相盗例は適用されるの?

例えば、内縁の夫が、同居中の内妻が自宅内の同女の金庫に保管していた金を盗った場合を考えてみましょう。内縁関係も、家族関係であることからすると、この夫は、窃盗罪として処罰されないようにも思えます。しかし、最高裁判所は、窃盗罪として処罰されるとしました。その理由は、親族相盗例は処罰されないという非常に大きな効果をもたらすので、処罰されない範囲を明確にするため、家族関係の有無は基本的には戸籍の記載によって決めましょう、ということで、内縁関係では足りないとしたのです。

養親が成年後見人だった場合は、親族相盗例は適用されない?

例えば、両親が他界し、未成年の子が残され、実の祖母が家庭裁判所から成年後見人に選任されたとします。

※成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などによって物事を判断する能力が十分でない方について、家庭裁判所がその方の権利を守る援助者を選ぶことで、本人を法律的に支援する公的な制度であり、この援助者のことを成年後見人といい、援助される方を成年被後見人といいます。

最高裁判所の判例では、交通事故により意思疎通ができない状態となった養子を成年被後見人とし、その養親が成年後見人に選任されていたところ、養親が、後見の事務として預かって管理していた養子の預貯金を払い戻した上で、競馬や家電製品の購入など、自分のために使ってしまった場合、業務上横領罪として処罰されるとしました。

その理由として、成年後見人の事務は公的性格を有するということにあります。つまり、養親が家庭裁判所から選任された成年後見人という「公的」な立場にある以上、「家族間」の問題では済まされないということです。成年後見制度は、物事を判断する能力が十分でない方を法律的に支援する制度ですので、簡単に言えば、「公」の制度ということになります。

そして、養親が養子の財産に手をつけるという事態が、このような「公」の制度の中で起きてしまった以上、「家族」同士での話し合いの解決では済まない、ということなのです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

刑事弁護についての法律相談を受け付けております。

刑事弁護について、弁護士に相談したいという方は法律事務所ホームワンへご相談ください。初回の相談は無料です。※刑事事件の性質上、接見など緊急対応が必要な場合があるため、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県など、原則として当事務所から90分圏内のエリアに対応しております。

法律事務所ホームワン 刑事弁護専門サイト

SNSでもご購読できます。